株式会社ロブ 代表取締役社長 前田一寿(まえだかずとし)氏 インタビュー
●略歴
1984年 早稲田大学政治経済学部卒業
2002年 慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(M.B.A.)
この間、スウェーデンStockholm School of Economics 留学
米国にて国際EAP協会EAP特別プログラム修
2009年 大妻女子大学家政学部 非常勤講師(ライフデザイン学科 職業集団の心理学)
●職歴
1984年 株式会社熊谷組入社
2000年 同社退社(慶應義塾大学大学院入学のため)
2003年 株式会社ロブ設立
・日本初のストレスマネジメント専用施設「Kiraku霞が関」設立・運営に参画
●所属団体
日本産業衛生学会、日本産業ストレス学会、国際EAP協会、日本EAP協会
●著作
「組織を守るストレスワクチン」(新刊 同友館刊)
「こころの臨床アラカルト 新しいこころのケア・システム」(星和書店刊、分担執筆)
(小澤)本日は、ありがとうございます。前田先生は、様々な企業のストレス対策を手掛けていらっしゃいますが、ワーカーのストレスと職場環境について体験的に気づかれたことなど教えていただけますか?
(前田)職場環境というと、仕事に専念できる場と考えがちですが、実は仕事を進めていく上で重要なのは、いかに周囲や関係者とよい関係性を作っていくかだと思います。現代社会は、組織で仕事をしていく社会。職場環境も、個々のプライバシーは保ちながらも、孤立感を持たせない適度な距離感を維持できる空間作りが大切ではないかと思います。
(小澤)ドイツなどでは、オフィスに自然光を取り入れるということの重要性を考慮して外部に面した窓からのオフィスの奥行きが法律で決められていますが、自然を意識できるオフィス環境は重要なのでしょうね?
(前田)ストレスと太陽光の関係は、様々な形で研究が進んでいます。太陽光が眼を通じて人間の体内時計をリセットしてくれているのは事実のようです。体内時計は25時間周期といわれています。それを24時間周期に合わせるには朝に太陽光を浴びるのが一番。それができないとリズムが崩れてしまいます。また人間は、何万年と時間を太陽の位置で判断してきました。ちょうど天頂にある頃はお昼だなあとか、西に沈んでくると夕方か、そろそろ仕事も急がねばとか。その点から考えても、自然光の入る職場環境は重要だと思います。
(小澤)御社ではストレスに対して非常にユニークなアプローチを提案されていますが、その概要をご紹介いただけますか?
(前田)私どもでは、企業の組織改善を様々なストレスを切り口に行っています。ストレスは実は組織の活性度合い、相互の意思疎通の度合い、ビジネスモデルの適応度合い等が判断できるバロメーターなのです。またこの後の対応策として、「ストレスワクチン」の呼称で疑似体験的にストレス状態を作り、そこでどうすればよいかを考えるプログラムを提供しています。組織への適応を促進したり、組織課題を皆で見出したりできるものです。
(小澤)働き方が変わることでオフィス環境が見直される際に、ワーカーには少なからずストレスがかかる場合があります。御社のアプローチはこうした場合にも有効なのでしょうか?
(前田)それは、言葉を換えるとストレスをよい方向に調整できると、よい職場風土につながるともいえます。オフィス環境が整い、各々が有機的かつ適度な関係性を維持できる職場を作りあげるのも非常に有効な手段といえますね。
(小澤)ワクチンというのは、オフィスづくりでパイロット的に一部を作って検証する作業にも似ているところがあるような気がします。実体験をシミュレーションする中で、理解も深まり、新しいオフィス環境のストレスも低減されるのでしょうね。
(前田)私もその通りだと思います。人で構成されている限り組織も生きていますし、変わってくる。当然のことながら、組織によって、そして時代によって最適なオフィスも変わる。今、どのようなオフィス環境が、その組織にふさわしいか。何度も実体験をシミュレートしていくことが様々な好循環を生んでいくのではないでしょうか。経験の共有はさらに組織へのコミットメントを強くしていくのだと思います。
(小澤)これからのオフィスづくりは、ワーカーのメンタルな側面も重視して進める必要があると思いますので、従来のようなデザイナーだけの一存では、上手くいかなくなりつつあります。DOUMAとしても包括的なオフィスづくりを考える上で大変参考になるお話しをいただき、ありがとうございました。今後ともご指導を宜しくお願い致します。